コロナ倒産の増加で恐れるべきは零細スタートアップの消滅

【経済考察】 令和二年五月二十一日に小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン(乙巳)代取の記事『日本人は「コロナ倒産の増加」を恐れすぎている/東洋経済』が配信。企業数の減少は、即ち失業の増加ではない点を主張した。アトキンソン代取は米ゴールドマン・サックス出身。


雇用の数で言えば、恐れる必要がない。だが、日本は≪大企業ー中小企業ー零細企業≫のピラミッド型構造なので、一番下の土台が多く倒産すると上の中小と大企業にも余波が及ぶ。記事内で言及した「付加価値」は、以下の計算式から導き出す。


  1. 売上高 - 外部購入価値(控除法、中小企業庁方式)
  2. 経常利益 + 人件費 + 賃借料 + 減価償却費 + 金融費用 + 租税公課(加算法、日銀方式)


どちらでも材料費や購入部品費、外注加工費等を除く。大企業ならば同じ大か、中小から。中小なら同じ中小か、零細から材料費等を計上するだろう。全付加価値の構成比は大が五割弱、中小が四割弱、零細は一割強。だが、零細は大に比べて三割分も付加価値を生産している。


  • 付加価値生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数


この計算式は、一人当たりの付加価値額である。今回に掲示してある「一社あたり平均社員数」で割ると、大が九百二十一.七億円、零細は百五.一億円で約九倍の差。一方、社員数は約三百八十五倍も差がある。本来であるのならば社員が多い分、零細よりも四百倍の付加価値を大は出すべきだろう。総額で視れば大企業群だが、生産性は零細企業群の方が断然、高い。マネジメントに関し、大企業は零細よりも劣っている。


事実、社員数で四百倍ちかく開きがあるのに、「労働生産性」なら大企業の四割を零細が叩き出している。零細は軽んじるべきでなく、重んじるべき。※図表の労働生産性の合計値は誤っている。



雇用増加スパイラルへ

 アトキンソン代取は中堅企業を推す。それは間違いではないが、優先すべきは零細という事が前述より導き出せる。雇用を守るのではなく、雇用を創出し、労働市場の流動性を高める。その為に、零細を政府がバックアップして、中小に育て、次に中堅に、そして大に成れれば自ずと雇用は増加する。この雇用増加スパイラルを令和で生み出せるか、否か。


ポイントは、新たな市場等を創出できる若きスタートアップを政府が、国民がバックアップできるか。嫉妬心からだろうか、悲しきかな若手潰し、若手無視は非常に多い。大企業群が政府と交渉して、納税額を控えている点は否めない。ならば、その分で徹底的にスタートアップの零細へ大投資すべきだろう。


アトキンソン代取は、以下等を自著「日本人の勝算/東洋経済」で訴えている。四は主に大企業に言える事。

  1. 継続的な賃金上昇
  2. 米国を手本にしない
  3. 輸出強化
  4. 生産性向上
  5. 人的資本の形成支援


そして巻末では以下で締めくくる。

今ならまだ、日本人には勝算があります。政府、そしてすべての日本人がこの「日本人の勝算」に気づき、行動を開始することを願ってやみません


「コロナ倒産の増加」の中で、特に零細スタートアップが消滅する事を恐れた方が良いだろう。


記事:羽田野正法

写真:David Mark Atkinson

画像:日本人は「コロナ倒産の増加」を恐れすぎている/東洋経済

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