経団連の九月入学への考え方(大学と小中高)

【教育報道】 経団連(会長:中西宏明)は、令和二年五月二十九日に『九月入学移行に関する考え方』を示した。大学、大学への進学者を育てる初等・中等教育についての基本的な考え方となる。セミコロン以下はハイムの指摘。


=大学教育=

  1. 秋入学により学事歴における国際的な整合性を確保する事で、日本の大学・学生・留学生について、グローバルな視点でレベルアップが図られる事を期待。今後も、秋入学への移行を含めた大学のグローバル化に向けた議論が深まる事を歓迎;日米中の内、秋入学は中国のみ。
  2. 大学のグローバル化は、入学時期の変更だけで実現するものではない。総合的な質の向上により可能。入学の時期変更だけが目的化する事で、真のグローバル化に向けた議論が混乱しかねない事を懸念。「ポスト コロナ時代」の大学教育の在り方自体を議論する事が求められている;大学の世界化は学術レベルの高さではないのか。 
  3. 本来、大学経営は、各々の理念・目的・規模・学生の状況等により、自由な環境で内外で切磋琢磨しながら行われるべきものである。入学時期だけでなく、卒業時期、在学年数等も一律ではなく、多様な選択肢について考察を進めていくべき。多様化を促進し、全体の改革の流れに繋げていく事が、現実的な解決策と考える;その通り。多様性を重視し、一律は無用。
  4. 企業の採用選考活動は、新卒一括採用に加えて既に、多様化・複線化。更に「通年採用」や「ジョブ型採用」等の対応が進む事が見込まれる。大学の自主的な秋卒業の動きに対しては、企業も積極的に対応する。他方、日本人の大学生の間で海外留学の志望者が減少する恐れがある事を懸念。今こそ、世界で活躍できるグローバル(世界で活躍できる)人材の育成に産学協議会として取組んでいく;採用選考の多様化こそ、先に行うべきだろう。


=初等・中等教育=;全て賛同

  1.  コロナ禍によって、子ども達の教育を受ける権利が損なわれる事、またICT環境等、家庭の状況や自治体・学校間の取組みの違いによって、子ども達が受けるべき教育内容に格差が生ずる様な事があってはならない。
  2. 新型コロナウイルスのリスクを前提とした「新しい教育様式」を確立しなければならない。とりわけ、日本の教育機関のデジタル化を加速的に実装し、リモート授業が実施可能な環境を整備する必要がある。
  3. 緊急時でも対応可能なレジリエント(弾力的・柔軟)な教育基盤をハード面とソフト面双方から整えると同時に、デジタル化や生徒毎の個別最適化を通じて教育の質を飛躍的に向上させていく事が重要。また本来、生徒と向かい合って行うべき事項に教師の役割を特化させていく事も重要。
  4. 学習の遅れを取戻す為には、先ずは、学年を超えた「教育カリキュラムの再編」や来年度の中学・高校・大学等の「入試への特別な配慮」の検討が必要。
  5. 教育現場の課題は、九月入学への移行で全て解決できるものではない。また、初等中等教育開始年齢の遅れは、国民全体の教育水準の低下に繋がるとの指摘もある。中長期、グローバルな視点、社会的な影響等を踏まえて、教育の質を更に推進する為の方策として、他の制度・慣習との関係を整理しつつ、慎重に検討すべき。 

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