『秘密管理性』が肝、営業秘密に関する五判例

【ビジネス報道】 経産省(大臣:梶山弘志)は、令和二年六月十二日に第六回『営業秘密官民フォーラム』を開催。


弁護士知財ネットの末吉亙(丙申)理事長は、営業秘密に関する判例を五つ指し示し、「秘密管理性は、企業の秘密管理意思が従業員・第三者に対し、認識可能である秘密管理措置の存在が主要な立証命題であり、秘密管理の不徹底は秘密管理措置を攻撃する間接事実のひとつに過ぎない。」とした。



(本判決)東京高判平成二十九・三・二十一;認識可能性要件を重視した刑事判決

  1. 秘密管理性を要件とした趣旨は、事業者保有情報に接した者に、当該情報を使用等することの可否を予測可能にして情報の自由利用を阻害しないため、
  2. よって、当該情報が秘密として管理されているためには、当該情報にアクセスした従業員や外部者に、当該情報が秘密であることが十分に認識できるようにされていることが重要で、その為、当該情報にアクセスできる者を制限するなど、保有者が当該情報を合理的な方法で管理していることが必要
  3. 上記一の趣旨からは、客観的認識可能性こそが重要であり、アクセス制限の点は秘密管理性の有無を判断する上で重要な要素だが独立の要件ではない
  4. よって、本件顧客情報へのアクセス制限に不備があったとしても、当該情報に接した者が秘密であると認識できれば、全体として秘密管理性の要件は満たされていたというべき。



名古屋地判平成二十・三・十三;秘密管理に不十分さがあっても秘密管理性要件を充足するとする民事判決

原告Xが仕入先や得意先に対して・・・設計図等の提供行為を行っていたことにより、Xの従業員において、仕入先や得意先に対して求められる情報管理がその程度の緩やかなものでよいと認識することになるとしても、設計図等が営業秘密であって自己又は第三者のために流用することが許されないという認識又は認識可能性が失われるものとは認められない


大阪高判平成二十・七・十八;同上

一審原告Xは、本件誓約書を作成したころに、同様の書面を上記秘密事項を知りうる立場にあると判断された営業関係の従業員全員に作成させて秘密保持義務を課すなどしたものであるから、Xが同情報を知りうる立場にある従業員全員に本件誓約書と同じ体裁の書面を作成させて秘密保持義務を課したことにより、従業員との関係で客観的に認識できる程度に対外的に漏出しないように、上記情報(X商品の販売先業者名、当該業者への販売価格、仕入価格)が秘密として管理されていたものと認めるのが相当



大阪地判平成三十・三・五;本判決以降も,同趣旨民事判決あり

顧客情報に関し、物理的管理が徹底されていたと言い難い事情があるが、規範的な管理に加え、配置販売業者にとっての顧客情報の重要性に鑑み、従業員らにとっても秘密管理の対象とされるべきものであると認識可能な措置は執られていた


知財高判平成三十・三・二十六;同上

本件情報に秘密管理措置が講じられていることは明らか(就業規則の秘密保持義務規定、情報セキュリティ教育、本件情報の秘密指定、社内ファイル サーバ内フォルダにアクセスできる従業員の限定)で、仮に、アクセス権限のない従業員がアクセス可能な従業員からデータをプリント アウトしてもらうといった運用が業務上の必要に応じて行われることがあったとしても秘密管理措置が形骸化されてはいない


下線:FPhime

写真:KTS法律事務所

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