北区『都議補選』総括、感じが悪かった陣営と各種数字

【政治考察】 令和二年七月五日に『都議補選』の投開票が行われた。北区の当選者は、自民・公明が推した山田加奈子(辛亥)都議。得票数は五万二千二百二十五票、得票率は三十四.四四㌫。次点は、立憲・共産が推した斉藤里恵(甲子)元・北区議の三万六千二百十五票、二十三.八八㌫。


三位は維新が推した佐藤古都(戊辰)の三万三千九百三票、二十二.三六㌫。四位は都Fが推した天風いぶき(乙丑)の二万三千百八十六票、十五.二九㌫。五位はホ新が推した新藤加菜(癸酉)の六千百二十五票、四.〇四㌫。同区の投票率は五十七.六九㌫だった。都内の都知事選の投票率は五十五.〇〇㌫。


再選した小池百合子(壬辰)都知事は、三百六十万票を得て五十九.七二㌫だったが、北区では知事与党の都FがWスコアで惨敗。来年七月の『都議選』では暗雲が立ち込める。空気的には都F全滅(五割以上の減)もあり得る。北区補選も都知事選も実質的に自公が推した候補は当選した。



<bizlinTVの確からしさ>

 北区の五候補を「bizlinTV」が映像取材したが、加菜以外は投票結果に順当となった。里恵元・北区議は一時、当該チャンネルでトップ掲載していたので差が生じた。再生回数の順位は加菜を除き、里恵元・区議、加奈子都議、古都、いぶき。


加菜は都知事選の別候補とコラボしていた。再生回数が伸びたものの、大きく実数(投票結果)に結びつかなかった。選挙コンバージョン率の問題だ。「bizlinTV」はエリート層をターゲッティングしているので、実数は著名YouTuberよりも低いが、確からしい点を北区補選でも立証できた。選挙コンバージョン率の割り合いで大差がない。


選挙は投票結果という実数だが、YouTubeの再生回数とは連動しない領域がある。今回の加菜候補以外の四候補は百単位の再生回数で、加菜候補のみ一万回を超えた。統計学でいう「外れ値」だ。YouTubeや他のソーシャル メディアの世界では、この外れ値を「バズった」等と表現して着目されがちだが、コンバージョンに結びつかなければ単なる仮想値でしかない。



選挙時におけるネットの数字の見方

 この見極めがソーシャル メディアの世界では難しい。TwitterやInstagramではフォロワ数に着目されるものの、あれは累積数なので実数と結びつきにくい。一時期、大企業が「インフルエンサ」を積極的に利用していたものの、目標の実数に結びつかない事が露呈。沈静化した。


ただ今回の加菜の得票数・六千票は、三年後の『統一地方選』では当選する数字だ。「bizlinTV」が相応に影響したと云える。既に彼女のTwで明示している通り、江東区議を『衆院選』を経て狙う模様。昨年の同区の最低得票数は、二千六百四票。来年の都議選は一万票単位なので、現状では厳しいだろう。


街頭演説を一番、YTで発信したのは古都。動画の影響がそれなりにあっただろうが、YT配信を行わなかった加奈子都議には迫れなかった。この様に他の報道機関が報じる事によって、拡散する事実がある。検索結果のインプレッションでも効果がある(いわゆる一頁目)。このインプレッション数は再生回数ではない。


支持者は陣営がアップした動画を視るだろう。しかし現実は無党派が圧倒的多数だ。無党派に届ける為には、信頼ある報道機関に取材される以外ない。何故なら新人の候補者は無党派に信用がないからだ。北区補選を取材してネットで記事を上げていたのは、各スポーツ紙だった。スポーツ紙にはターゲッティング的に限界がある。選挙に関しては、コンバージョン率が低い読者層だ。何故なら興味があるのはスポーツだからだ。

「bizlinTV」のユーザは、エリート層なのでオムニチャネルによる影響力は計り知れない(選挙においては投票行動の事)。



<各陣営の雑感>

 北区は維新・音喜多駿(癸亥)参議の地盤だった。以前、里恵元・区議は音喜多参議と共に活動をしていた。この里恵元・区議と今回に音喜多参議が応援し続けた古都の得票数を単純合算すると、七万票に迫る。ただ北区は共産が強めなエリアでもあるので、一概には当選とは言い難い。別の視点では、音喜多参議が獲れる票を割ってしまった、とも言える選挙だった。彼のマネジメント力が今後の課題だ。


参議は都議や区議を育てる事ができる。その為にも時間が衆議よりもある。選挙のない六年間の事だ。衆議は平均的に二年半程度しか時間がない。早く報道陣への横柄な態度(感謝を示さない)を止めないと、下が当選しない(=選挙活動を報じない)。これは維新全体に言える事だろう。以前から書いている。よって東京で議席が獲れない。


その点では、今回の選挙は里恵元・区議が最も優れていた。公約の雰囲気に合致している応対だった(意外と公約の雰囲気に合致した報道応対はない、大抵が感じ悪い)。彼女は陣営も優れているので、じきに当選するだろう。普通、候補が感じが悪い事は滅多にない。感じが悪いのは候補の周囲のスタッフ・応援議員・陣営の事だ。



各党の新人「育成能力」が問われる

 報道陣は有権者そのものだ。その報じられた裏には巨万と有権者がいる。その記者がどの様に書くのか、そのカメラマンがどの様に撮るのか、記者達も人間である。邪険にされてペンが走ると思えない。新人で当選するのは、本人と陣営が「腰が低くて精力的」と相場は決まっている。この点では、群馬・山本一太(戊戌)県知事がずば抜けていた。

記者達は有権者の前の応対以外も見ている。そしてそもそも、費用を支払って時間を掛けて取材に行っている点を覚えなければならない(一回、数時間以上かかるもの)。


いぶき陣営は、非常に優れた若手スタッフと信じられない程の上から目線で圧迫的な中堅以上のスタッフがいた。流石にここまでは、自民でもいないのではないか。若手が優れているだけに可哀そうである。加奈子陣営は、公明・中堅党員も相まって安定感。好感度高い雰囲気を醸し出していた。


そして、新たに女性新人候補を立て始めたホ新・立花孝志(丁未)元・参議も着目だろう。若者へチャンスを与える発想は素晴らしいが、やや放任主義で躾の面に問題がある。あくまでも公人を目指しているならば、ソーシャル メディアを含め、上司として躾を行った方が良いだろう。若くとも、そのエリアの代表になろうとしているのだから。最低限の社会常識が必要だ。


間違えてはならないのは、主権者の下が公務員である。同列ならそもそも主権者ではない。よって至極当然に上から論じた。主権者は上から論じなければならない。憲法は三権も含め、上下関係を規定している。


記事:羽田野正法、金剛正臣

撮影:岡本早百合

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