高校はまるで異なる学校に、「遠隔・オンライン教育」「遠隔教育」「遠隔授業」の定義

【教育報道】 文科省(大臣:萩生田光一)は、令和二年七月九日に第九回『新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ(WG)』を開催した。議題はWG名。このWGは「初等中等教育分科会/中央教育審議会」の下に置かれている。


同分科会は、現下について以下の様に捉えている(下線:ハイム)。

今後、社会全体が、長期間にわたり新型コロナウイルス感染症とともに生きていかなければならない状況であることから、感染症対策を講じつつ、初等中等教育が協働的な学び合いの中で行われる特質を持つことに鑑み、最大限、健やかな学びの保障に取り組んでいかなければならない



withコロナ・afterコロナが前提の社会では、今までの教育手法が通用しない。同省は「遠隔・オンライン教育」「遠隔教育」「遠隔授業」を分け、遠隔・オンライン教育を含むICT活用を中心としていく。以下は同省定義。


  1.  遠隔・オンライン教育;遠隔システムを用いて、同時双方向で学校同士を繋いだ合同授業の実施や専門家等の活用等を行う。また、授業の一部や家庭学習等において学びをより効果的にする動画等の素材を活用する
  2. 遠隔教育;遠隔システムを活用した同時双方向型で行う教育
  3. 遠隔授業;遠隔教育の内、授業で遠隔システムを使うもの(合同授業型、教師支援型、教科・科目充実型のいずれかの類型)



<開放的な高校へ「校長」ワントップ制の変更か>

 WGでは「二十年後・三十年後の社会像・地域像を見据えた高等学校教育の推進方策」を議論した(小規模校以外)。将来社会と高校との関係性について検討を重んじ、高卒時の人材像を再検討する。現在は七割が普通科卒だが、各学科の在り方の見直しや普通科・専門学科・総合学科のポートフォリオの見直しについて検討していく。


今までの一つの学校の中だけで全ての教育活動を完結させる「自前主義」から脱却し、学校内外の教育資源を最大限活用して他関係機関と連携した教育を行う必要性に言及した点は大きい。これからの高校は、国内外の大学や企業等の協力も得ながら、文系・理系に囚われない高度な学びの提供を重要視していく。独立した閉鎖的な高校から連携重視の開放的な高校への転換だ。


これは、これから各高校の外部とのコミュニケーション能力が求められる点を示唆する。今までは「校長」がワントップ制の学校運営のスタイルであったが、企業の取締役会の様な合議制の学校運営に移行するものとみられる。高校の数は全国で五千校に迫り、国が全高校へ他関係機関との連携の手筈を整えると思えない。各高校の「役員会」の様な意思決定機関が、高校のレベルを左右する。各高校の役員の人脈や行動力が肝だ。


過去の中央教育審議会では、以下が提言されていた。

「今こそ、従来の『自前主義』から脱却し…首長部局や大学等・民間団体・企業等とも自ら積極的に効果的な連携を仕掛け、地域住民も一体となって協働して取組を進めていく」ことが強く求められる



また、家庭でのオンライン学習を成立させる要件を挙げた。

  1. ICT環境の整備
  2. 教師主導の講義型の授業を改善
  3. 家庭学習において不明箇所がある学習者への支援


他にも家庭学習の単位認定や病気療養中の生徒の要件緩和、「ウェル ビーイング」の視点等が挙がった。ウェル ビーイングとは個人・グループの状態を指す。上図はPwC Japanグループのウェルビーイング(健康経営)。


これらの取組みは、従来からある高校自体が変容する事を意味する。画一的な高校から特色ある(各々が異なった)高校に変わっていく。生徒や保護者がどの高校を選択するかで、その生徒の未来は変わる。高校から真に人生を選択する時代に入る。

高校の「学習指導要領」の改訂まで後二年を切った。


記事:羽田野正法

画像:遠隔教育の分類/文部科学省、義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方/同、ウェルビーイング(健康経営)/プライスウォーターハウスクーパース

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