小中学生と高校生に求める主権者教育のレベル|主権者教育推進会議

【教育報道】 文科省(大臣:萩生田光一)は、令和二年七月九日に第十回『主権者教育推進会議』を開き、三本柱の一柱『各学校段階での主権者教育の充実』につき、論点例(たたき台)を配布した。他の十八歳未満の子ど向けの二柱は「家庭や地域における主権者教育の推進」と「メディア リテラシの育成」。


論点例では小中、高校と学校間や教科間の連携の三つに大別。


A.小中(六歳~十五歳)では、以下の二点を論点例とした。

  1. 小中では学習指導要領に基づき、主に社会科において国や地方公共団体の政治の仕組みや働きについて学習。児童生徒が政治経済に興味・関心をもち、社会の形成に参画する基礎を培うには、自分達の住む市区町村の政治や経済、地方自治等、身近な地域に関わる学習を一層充実することが求められるが、その際、どのような工夫や留意点が考えられるか
  2.  社会で起きている事柄について、実感を持って考えさせる観点から、具体的な事象を模擬的に取り上げる事が考えられるが、例えば、同じ模擬選挙を行うにしても、①「実際の選挙で用いられている政策や公約等を活用する手法」、②「全ての設定を架空のものにする手法」、③「現実の社会で課題となっている事を取上げつつも、候補者や政党等は架空の設定にする手法」、等取上げる事象等によって設定を工夫する事が考えられるが、特に小中段階においては、どのような工夫や留意点が考えられるか



B.高校(十五歳~十八歳)では以下を論点例とした。

  1. 高校では、自立した主体として社会に参画する為に必要な資質・能力を育成する必履修科目「公共」が新設。この公共においては、現実の具体的な社会的事象等を扱ったり、模擬的な活動を行ったりする事、関係する専門家や関係諸機関等との連携・協力を積極的に図る事が学習指導要領上、明示されたが、こうした指導を推進する観点から工夫すべき点や留意点についてはどのように考えるべきか



C.学校間や教科間の連携では以下を論点例とした。

  1.  小中高間や関係する教科間での連携等、学校種や教科間での連携を引続き推進する事が求められるが、工夫すべき点や留意点についてはどのように考えるべきか{中三で社会科公民的分野を学習し、その後、高一・二で必履修科目「公共」を学習する事となるが、設置者の異なる二校種間での連携、地歴科・家庭科等関係する教科、総合的な学習の時間や特別活動(学級・ホームルール活動、児童会・生徒会活動等)等との連携等}



以下は主な意見を抜粋(文字修飾ハイム)。

  • 自分達の意見や行動によって世の中を変える事ができるという体験や実感を味わって社会に出ていくプロセスが必要。子ども達が客体から主体になる為の実感のある学びができる様、地方自治を身近な素材として扱うべきではないか(A)
  •  高校で急に主権者教育を実施してもそう簡単には身に付かない(A)
  • 視察した際の高校生の意見として、人の話を聞く事で「今まで考えもしなかった見方がある事に気付いた」、「人と議論する中で意見が変わり得るのだと学ぶ事ができた」、という発言があった事は、非常に重要な点だと思う(A) 
  • 学校訪問をした学校では、「どういう権利を持ったら、どういう責任を負わなければいけないか」について、事例を基に議論させながら、権利責任という認識を子ども達に持たせる事を意識して授業を行っており、こういう点を他の学校にも広めるべき(A)
  • 訪問した中学校では、ある政策について考えさせる場合、今の自分、五十年後の自分自分とは異なる世代等の立場から考えさせる事、都市部や郡部の立場からそれぞれ考えさせること、理想だけでなく財政も含めた実現可能性の視点から考えさせる事等、多面的・多角的に考えさせる工夫や仕組みが大切であると感じた。また、生徒が、単に理想を求めるだけでなく、財政等も考慮しながら、自分達で政策を作り上げており、よく研究され分かっていると感じた(A)
  • 模擬選挙・模擬請願・模擬議会・高校生と県や市の職員との意見交換会、市町村議会議員との対話集会、市町村職員の出前講座、検察庁・裁判所への見学等を行った事がある。こうした活動は、社会科や公民科の先生だけが担当するのではなく、学校を挙げて全体として取組んでいく様な試みが必要だと思う(B)
  • 様々な取組みが行われていたり、外部専門家もいるが、それが学校の中に取込めていないという現状がある。学校外でこれらをコーディネートする人がいて、「こういうものがありますよ」と提示してもらえると、学校の立場としては有難い。こうしたコーディネータ役がいると、小中高の繋がりも出てくるのではないか(B)
  • 例えば、模擬投票を小学校でやる、中学校でやる、高校でもやるとなるとそれぞれの学校種でどこまでやるべきなのか連携はどうあるべきかが問題。この為、小中高をまとめて研究指定したり、学校外のコーディネータを活用したりする事について実践研究が必要ではないか(C)
  • 政治が、時事問題を含め、全ての社会問題と密接に関わっているという事を主権者教育で伝える事が重要。例えば、就職活動や消費税増税、環境問題等の児童生徒が関心を持ちやすい身近なテーマも政治と密接に関係していて、政治を中心に真剣に議論されており、決して自分に無関係なものではなく、自分事として伝えていく事が重要(C) 

記事:羽田野正法、撮影:岡本早百合

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