日本は原爆六千発分を保持、映画『アトムとピース ~瑠衣子 長崎の祈り~』

【社会ニュース】 平成二十八年六月十八日にドキュメンタリ映画『アトムとピース ~瑠衣子 長崎の祈り~/アークエンタテインメント』の初日舞台挨拶が行われ、監督の新田義貴が登壇した。出演している被爆三世の小学校教諭・松永瑠衣子が長崎・福島・青森を旅し、原子力の事実を探っていく。元米国務副長官のリチャード・L・アーミテージや元内閣総理大臣の菅直人、元科学技術事務次官の伊原義徳らがインタビュに登場しており、社会的に意義深い作品となった。


新田監督は、元NHKの報道取材員(ジャーナリスト)で、沖縄・アジア・中東・アフリカ等の社会問題にかかるドキュメンタリを制作してきた。昭和二十年八月九日にプルトニウム原爆(ナガサキ型原爆)が投下されて七十一年が経ち、撮影を開始。五年前に炉心融解(メルトダウン)を引き起こした東日本大震災が発生し、プルトニウムは僅かながら飛散した。青森では、使用済み核燃料から核燃料のウランとプルトニウムを取り出す為に、日本全国の原発のゴミを一手に集めている。新田監督は、「この映画は、瑠衣子という被爆賛成の普通の若者の目を通した“プルトニウム”をめぐる旅です。」とメッセージを記す。




<二十三歳の瑠衣子、何を想う>

 収録時の瑠衣子の年齢は二十三歳。高校生の時に被爆者の証言を後世に残す為に、ビデオ制作活動に携わった。大学在学中に東日本大震災が起こる。毎年、福島の子ども達の保養に携わる。瑠衣子は、旅を通じて学んだものを“絶望”ではなく、“溢れる優しさ”と“希望”と前向きなコメントを残した。しかし作中では、日本はプルトニウムを四十七㌧保有(原爆六千発分に相当)している事実に行きつく。「プルトニウムは、核兵器の原料なのです。」と新田監督は述べ、「唯一の被爆国である日本に何故、原発が多数あるのか。」という疑問を追求した。


米・アイゼンハワー元大統領が推し進めた原子力の平和利用「Atom for Peace」の演説から同作の表題を決めた。また「潜在的 核抑止力」、核武装の可能性を見据えた政治家たちの野望にも本作は切り込んだ。日本の原発の数は、世界第三位である。報道現在で、同作は七月いっぱい(五週間)東京で上映する事が決まっている。他にも主要都市での上映が順次決定している。更にDVDの発売も予定している。


=解説=

 王道の社会派ジャーナリズムで、本作の構成等のバランスは勉強になる点が多いだろう。十一歳で被爆し甲状腺がんを発病した母をもつ瑠衣子は中立の立ち位置で、賛成派と反対派の権威、地元の民間人と公務員の意見も織り交ぜている。最後の原爆が落ちた長崎、メルトダウンが起きた福島、核廃棄物を溜め込む青森を繋いだ点も評価が高い。


特に青森・六ヶ所村では、再来年に「日本原燃六ヶ所再処理工場」の本格稼働が待っている。こちらの議論も多いが、青森・大間町世界初の原発「大間原発」も警戒に値するだろう。特徴は、ウラン燃料とMOX燃料を全炉心に装荷できる点だ。報道現在、建設進行中である。



本作のパンフレットには、権威者のコメントも掲載されている。

“日本の原子力の父”と呼ばれる元科学技術事務次官の伊原は、「なぜ日本が太平洋戦争に突入したのか。それはエネルギー確保のためのものだった。今でもそれは変わらない。私自身は長く原子力に携わってきたので、注意して使えば有用なエネルギー源だと思っています。」と、元総理大臣の管は、「一部の政治家にとって、再処理能力を保持しプルトニウムを保有することが核兵器を作る能力があることを意味し、核抑止力になるという考え方がある。」と、“ジャパンハンドラ”と呼ばれる元米国務副長官のアーミテージは、「原発再稼働なしに経済大国日本の復活はあり得ない。米国と協力して原発を買いたい国に技術を提供してほしい。」と述べた。


『参院選二〇一六』では原発は争点になっていない様だ。現役世代のユーザは、子や孫の未来を考え忘れてはならない争点ではないだろうか。


映画『アトムとピース ~瑠衣子 長崎の祈り~/アークエンタテインメント㈱』初日舞台挨拶

撮影記者:金剛正臣

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