高校生まで注意、『第二・氷河期』のリスク回避

【社会考察】 令和三年一月十五日に厚労省(大臣:田村憲久)と文科省(大臣:萩生田光一)は、二年度『大学等 卒業予定者の就職内定状況(十二月一日現在)』を公表した。大学生の就職内定率は八十二.ニ㌫となった。この水準は「リーマンショック」時の平成二十年・八十一.六㌫に近似。


コロナ禍により、「第二・氷河期世代」が生まれてしまうかもしれない。


本データは、十月・十二月・二月・四月の四時点で調査。非正規の就職も含む。現在の「脱ゆとり世代」が凡(オオヨ)そ被っており、大学院生・大学生だけでなく、現在の高校生も注意が必要だ。何故ならば、平成の就職氷河期は元の水準が戻るまでに七、八年も掛かってしまっていたからだ。


平成時には、大企業を筆頭に正規から非正規への社内システム変更が行われた。令和時のコロナ禍では、今正にテレワーク等によって副業・兼業等で社内システムが変更し始めている。特に個人事業主の増加が見込まれている。明らかな社会変化中だ。ならば、平成時と同じ様に全国の企業が社内システム変更するまで、七、八年掛かるかもしれない。



本人は素より、高校生までの子息・子女を抱える保護者にも注意が欠かせない。



平成時の底は二十三年・六十八.八㌫。あくまでも十二月時点だが、大学生でも正規雇用が如何に厳しかったかを物語っている。令和での大企業群は非正規に代わり、欧米式「ジョブ型雇用」を採用し始めている(大企業群のテレワーク・ジョブ型雇用の実態調査|経団連調査)。現在のメインとなっている日本式は「メンバシップ型雇用」。



<知識の資本が問われる>

 日本式との大きな違いはスキル・資格。荒い表現だが、今までは「学校名」で就職格差があった。これからは、「何のスキル・資格(ないし経験・知識)を有しているか」が就職格差となるだろう。強いて言うなれば、「学部」が格差原因となり得る。「学士・修士・博士」も歴とした公的証明だが、他の国家資格等の公的証明は欠かせない。


高卒であったとしても商業高校は需要が高まりそうだ。日本の資本主義の祖・渋沢栄一への注目から「簿記」が見直されている。経営に簿記は欠かせないのだが、平成バブルの崩壊以降、簿記は軽んじられてきた。それは財務省においてでも顕著で、簿記の知識が疎く、日本の財政を切り盛りしていた。これでは財政政策が上手くいかなくて、当たり前である。


大企業だけでなく、中小・零細や官公庁にも簿記チームが出来上がっていくだろう。簿記の延長上に税理士・公認会計士がおり、その知識は経営・行政指標の分析に繋がる。



複線方式に戻る

 この様に、最初は不景気だから就職率が下がるが、後には各社内システムの変更に適応できなかった学生が就職できない。ともすれば、今の大学生以下は複線として起業(個人事業主・法人)を選択肢に入れるべきだろう。この複線方式は何も新しいものではなく、戦前(明治・大正・昭和初期)の教育・社会制度では複線方式を採用していた。


十五歳を一つの基準に働ける力、勉強し続ける力を養っていた。社会もそれを許容していた。一方、戦後から現在までが単線方式というだけだった。米国による日本占領期に「民間情報教育局(CIE)/GHQ」が日本式教育を破壊し、新・教育を開始。大学進学を善と変え、その結果、一括採用制度が蔓延した。


人は元来、多様であり、大学進学のみが唯一ではない。官民のジョブ型雇用が結果的に複線方式に戻していくだろう。例えば、有名な経済学部をただ出ていても、簿記(経理分析)チームには簿記資格のある高卒が欲しい。全国の若き代取達によって、適材適所が実現していく。学校名だけでは決して選ばない。それはGoogle等の世界大手も同じ。


依って、脱ゆとり以下の学生と保護者はスキル・資格中心の複線方式で臨まれたい。それが、来るかもしれない「第二・氷河期」におけるリスク回避であろう。


記事:FP技能士・羽田野正法

画像:プレスリリース/厚生労働省、FPhime

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