米中の憲法前文

【政治考察】 各国には憲法がある。その憲法には前文がある。憲法前文には、その国家国民の信念・指針・在り方が記されている。日本は世界経済大国の第三位なので、第一位・米国と第二位・中国の憲法前文を確認する。


 米国の憲法前文は、江戸時代・天明七(一七八七)年にできた。その十二年前に英国との「米・独立戦争」があった。当該憲法の署名筆頭は、初代・ジョージワシントン(壬子)米統領。憲法公布から二百三十年以上が経過し、その間の改憲(修正)数は三十回ちかく。八年に一回程度で改憲している事になる。


「我ら合衆国の国民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に備え、一般の福祉を増進し、我らと我らの子孫の為に自由の恵沢を確保する目的を以て、ここにアメリカ合衆国の為にこの憲法を制定し、確定する。」


 中国の憲法前文(序言)は、昭和五十七(一九八二)年にできた。後に一部改正。第二代・鄧小平(甲辰)最高指導者の下で改憲。習近平(癸巳)最高指導者は第五代。昭和二十四(一九四九)年の臨時憲法を含め、中国は十回も改憲(修正)。こちらも凡(オオヨ)そ七年に一回。


「中国は、世界で歴史の最も古い国家の一つである。中国の各民族人民は、これまで共同して輝かしい文化を創造し、また光栄ある革命的伝統をもっている。

 一八四〇年以後、封建的な中国は次第に半植民地・半封建の国家に変わっていった。中国人民は、国家の独立・民族の解放及び民主と自由の為に、戦友の屍を乗り越えて英雄的な奮闘を行った。


二十世紀に、天地を覆す偉大な歴史的な変革が中国に起きた。

一九一一年、孫中山先生の指導する辛亥革命が封建帝制を廃絶し、中華民国を創立した。しかし、帝国主義と封建主義に反対する中国人民の歴史的任務は達成されなかった。

一九四九年、中国の各民族人民は、毛沢東主席を領袖とする中国共産党の統率的指導の下、長期の困難で曲折した武装闘争及びその他の形態の闘争を経て後、遂に帝国主義、封建主義及び官僚資本主義の支配を覆し、新民主主義の偉大な勝利を収め、中華人民共和国を樹立した。

この時から、中国人民は閣の権力を掌握し、国家の主人公となった。



 中華人民共和国の成立後、我が国の新民主主義から社会主義への移行が逐次に実現された。生産手段の私有制の社会主義的改造が達成され、人が人を搾取する制度が消滅され、社会主義制度が確立された。労働者階級が指導し労農同盟を基礎とする人民民主独裁は、固められ発展された。中国人民と中国人民解放軍は、帝国主義と覇権主義の侵略・破壊・武力挑発に打ち勝ち、国家の独立と安全を維持し、国防を強化した。


経済建設は大きな成果を収め、独立し比較的に整った社会主義的工業体系が基本的に形成され、農業生産が顕著に増加した。教育・科学・文化等の事業は大きな発展を遂げ、社会主義の思想教育は著しい成果を上げた。広範な人民の生活は、比較的に大きく改善された。


中国の新民主主義革命の勝利と社会主義事業の成果は、中国の各民族人民が、中国共産党の統率的指導の下、マルクス=レーニン主義と毛沢東思想の導きに基づき、真理を堅持し、誤りを是正し、多くの困難と障害に打ち勝って、獲得したものである。我が国は、今後、長期に社会主義初級段階にあるであろう。国家の根本的任務は、中国的特色のある社会主義の道に沿って、力を集中して社会主義的現代化の建設を行う事である。


中国の各民族人民は、引き続き中国共産党の統率的指導の下、マルクス=レーニン主義、毛沢東思想及び鄭小平理論及び『三つの代表』の重要思想に導かれ、人民民主独裁を堅持し、社会主義の道を堅持し、改革・開放を堅持し、社会主義の諸制度を絶えず改善し、社会主義的市場経済を発展させ、社会主義的民主を発展させ、社会主義的法制を健全にし、自力更生、刻苦奮闘し、工業・農業・国防及び科学技術の現代化を逐次実現し物質文明、 政治文明及び精神文明の調和の取れた発展を推進して、我が国を富強・民主・文明を備えた社会主義国家に築き上げるであろう。



 我が国では、搾取階級は階級としては既に消滅したが、しかし階級闘争は一定の範囲で尚長期に亘り存在するであろう。中国人民は、我が国の社会主義制度を敵視し破壊する国内外の敵対勢力と敵対分子に対し闘争しなければならない。


台湾は中華人民共和国の神聖な領土の一部である。祖国統一の大業を完遂する事は、台湾の同胞を含む全中国人民の神聖な責務である。


社会主義建設の事業は、労働者、農民及び知識分子に依拠し、団結できる全ての力を団結させる事を必須とする。長期の革命と建設の過程において、 中国共産党の統率的指導の下で、 各民主党派と各人民団体が参加し、 社会主義的勤労者、 社会主義事業の建設者、 社会主義を擁護する愛国者及び祖国統一を擁護する愛国者の全てを含む、 広範な愛国統一戦線が結成されたが、 この統一戦線は引き続き強固になり発展して行くであろう。


中国人民政治協商会議は広範な代表性を有する統一戦線組織であり、これまで重要な歴史的役割を果たしてきたが、今後も、国家の政治生活・社会生活及び対外友好活動において、また社会主義的現代化の建設を進め国家の統一と団結を維持する闘争において、一層重要な役割を果たしていくであろう。中国共産党が統率的指導する多党協力と政治協商制度は、長期に存在し発展するであろう。



 中華人民共和国は、全国の各民族人民が共同で創建した統一的な多民族国家である。平等・団結・相互援助の社会主義的民族関係は既に確立されたが、これは今後も引き続き強化されるであろう。民族の団結を維持する闘争においては、大民族―主に大漢族主義―に反対すると共に、地方民族主義にも反対しなければならない。国家は、全国各民族の共同の繁栄を促進する為に全力を尽くす。


中国の革命と建設の成果は、世界の人民の支持と不可分である。中国の前途は世界の前途と緊密に繋がっている。中国は独立自主の対外政策を堅持し、主権と領土保全の相互尊重・相互不可侵・相互内政不干渉・平等互恵・平和共存の五原則を堅持し、各国との外交関係及び経済・文化の交流を発展させる。中国は帝国主義・覇権主義・植民地主義に対する反対を堅持し、世界各国の人民との団結を強化し、被抑圧民族と発展途上国が民族の独立を獲得・維持し民族の経済を発展させる正義の闘争を支持し、世界平和の維持及び人類の進歩的事業の促進の為に努力する。


本憲法は、法的形式で中国の各民族人民の奮闘の成果を確認し、国の根本的制度と根本的任務を定めている。憲法は国家の根本法であり、最高の法的効力をもつ。全国の各民族人民、全ての国家機関と武装力、各政党と各社会団体及び各企業・事業組織は何れも、憲法を活動の根本準則とし、且つ憲法の尊厳を維持し、憲法の実施を保証する責務を負わなければならない。」


翻訳:アメリカンセンターJAPAN、土屋英雄(平成十五年・十六年時点)

画像:THE METBEST TIMES

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