『緊急事態条項(国家緊急権)』とは|自民改憲草案

【日本報道】 菅義偉(戊子)内閣総理大臣は、令和三年六月十日に「中曽根康弘会長を偲び、新しい憲法を制定する推進大会」のVメッセージにて改憲『緊急事態条項』を訴えた。本大会は、超党派「新憲法制定議員同盟」が主催。


現行の昭和憲法には『国家緊急権』に関する条項が無い。明治憲法には有った。この国家緊急権は、有事の際に私権を制限するものである。G7の内、日本のみ国家緊急権に関する条項が無い。その点において昭和憲法は、世界で最も自由度の高い憲法と云える。


それを崩すか否か。この判断は、未来に責任を負う主権者の若者・若手が行わなければならない。自身達の為、子ども達の為、未来に生まれる赤ちゃん達の為に。一度、緊急事態条項を設ければ元には戻れない。国会にて発議されたならば、現在・未来を懸ける重大な議論を国民はしなければならない。


自民の改憲草案には「第九章 緊急事態」がある。次の二条を新設したい。

新・第九十八条(緊急事態の宣言)

  1. 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認める時は、法律の定めの所により、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発する事ができる。
  2. 緊急事態の宣言は、法律の定める所により、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
  3. 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があった時、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決した時、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認める時は、法律の定める所により、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。又、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとする時は、百日を超える毎に、事前に国会の承認を得なければならない。
  4. 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。


新・第九十九条(緊急事態の宣言の効果)

  1. 緊急事態の宣言が発せられた時は、法律の定める所により、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定する事ができる他、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をする事ができる。
  2. 前項の政令の制定及び処分については、法律の定める所により、事後に国会の承認を得なければならない。
  3. 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定める所により、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守る為に行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない
  4. 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定める所により、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設ける事ができる。

<百合子都政の場合>

 もし自民草案の改憲が国民に承認された場合の参考例として、「百合子都政」がある。東京新聞の十一日付も指摘している。議会の議決を経ない知事による「専決処分」の乱発だ。


東京新聞も報じる通り、昨年よりコロナ関連で二十回の専決処分を百合子都政が実施(報道現在)。「回数もさることながら、都の一般会計当初予算七兆四千億円の十四㌫に相当する一兆円もの補正予算が、議会審議を経ずに決定されるのも異例だ。」と警鐘を鳴らしている。


コロナ期の都議会「臨時会」は二回のみ。議会が後回しにされており、独裁的と言える。


自民草案では、九十九条一項(緊急政令)と二項(緊急政令・緊急処分)がこれに当たる。そして三項にて国民は、緊急政令・緊急処分等に従わなければならない(国民の順守義務)。従わない場合には、新法の制定で百合子都政の様に罰則も適用するだろう。



デメリットが勝っている「専決処分」

 新設の二条は、あくまでも方向性であり、実際の運用の仕方がポイントとなる。その運用の仕方は新法に依る。百合子都政を鑑みれば、その運用の仕方が見えてくる。彼女のコロナ関連の専決処分群で成果は出たのか。都民は知っているだろう。詰まり、現状で専決処分のメリットが見えない。デメリットは、「民主主義の低下」と「都民が収めた税金のムダ使い」。


万一、独裁であったとしても、メリットがデメリットを上回れば良いだろう。百合子都政のコロナ期のメリットは、「感染収束」と「自粛に応じた都民の生活補償」である。都内の医療体制は未だ強固にならず、飲食店の金銭補償の支払いも遅延させている。そもそも都は全都民へ現金給付できる貯金「財政調整基金」があったにも関わらず、医療関係へ出費した。結果を見れば、これは失敗に他ならない。


よって、先ずは自治体単位の専決処分で成功例があってから、成功パターンを学習し、その知見を憲法の緊急事態条項へ入れるべきではないだろうか。百合子都政の様に失敗している段階で入れては、失敗を回避できず、失敗を生かせない。「専決処分」の成功例が欲しい。


因みに現状では、緊急事態条項が無くとも、世界におけるコロナ感染者及び死亡者の数は“さざ波”と言われた通り、圧倒的に少ない。それよりも自殺者の数の方が多い。



データを重んじる菅内閣には、エビデンスに基づいた改憲言及を望むものである。

若者・若手は如何様に考えるか。

世界で最も自由度の高い憲法に緊急事態条項を入れるか。


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