「国債残高」一千兆円の危険性

【財政考察】 令和三年十一月二十六日に報道各社は、国債の残高が本年度末に一千兆円に達する見通しを伝えた。同日に岸田内閣が、本年度最初の補正予算案を閣議決定した為。


左派系の報道機関は、国債の残高を積み増す事を危険視する。これは無用な不安を煽るものと断じる事ができる。国民へ不安を煽る際の指標に使うのは、GDPと比べた政府の「公的」債務の比率。あくまでも政府の比率にのみ言及している点に注意されたい。左派報道はよく不安を煽る。


GDPは会計ではPLに値する。個人で言えば「年収」の事。このGDPは政府の歳出・歳入のみで構成されている訳ではなく、財務省の「対外純資産」の定義の様に、政府(公的)や企業・個人(民間)を足す。GDPと比較して債務額を煽るのであれば、民間の債務も合算すべきであろう。


ポイントは、年収に対しての債務比率が然(サ)して問題が無い点。PLよりもBS。個人の住宅ローンを考えてみよう。「住宅金融支援機構」によれば、個人は凡そ年収の六倍から七倍の住宅ローンを組んでいる。日本政府のGDP対債務比率は、二.六倍程度。


住宅ローンを組む際に金融機関が注視するのは、年収だけだろうか。否、純資産である。これは企業の借入れも同じ。個人であろうと企業であろうと純資産の多寡で信用が異なる。



<国債=資本金>

 報道現在で日本は世界最大の債権国家。資本主義の世界においては、世界最大の出資者と言える。よって純資産額は世界一と言える。世界で最も安定性がある。次いでドイツと中国が続く。基本的には金融資産であるが、主に日本政府ではなく、日本の民間が資産を有している。世界最大の債務国家が米国。純資産がまるで無い、と言えよう。


米政府の総債務残高はIMF調べで、三千五百兆円前後(本年度)。日本の三.五倍。GDPの倍率は四倍超。米国との債務の差が三.五倍。結果、GDPの差は四倍。妥当ではないだろうか。それどころか、日本は民間において純資産を構築している以上、率は日本の方が良い。中国は巨大なシャドーバンキング市場が存在するので、債務額は統計的に信頼できない。よって比較不可。


米国は対外純資産がマイナスである分、世界から投資されている。日本は投資されてないとも言える。この点はバランスであろう。借金してでも沢山投資されたいのか、堅実に資産を構築したいのか。結果、国民性の観点から日米の役割分担は、世界を安定させている。そこに新たなプレイヤ・中国が登場している。


さて、税理士でもある自民・西田昌司(戊戌)参議は、国債を「資本金」と捉えた。理屈は以下の通り。

  1. 政府(国)が国債発行⇒民間へ資金
  2. 資金を得た民間は実業を回し⇒利潤
  3. 利潤を得た民間は投資をし⇒金融資産等の資産構築
  4. 結果、世界最大の債権国家



注意すべきは為替

 日本政府が国債発行をすれば、日本国民の純資産が増える。日本政府が国債発行を渋れば、日本国民の純資産が減る。起点は国債発行となる。よって、国債は「資本金」と見做せる訳だ。ただ、注意点は為替。昭和六十年「プラザ合意」の様に極端に為替のルールチェンジをされると、収入が下がり、純資産が目減りする恐れがある。


プラザ合意の時、為替は二百四十円台/㌦。その後、一挙に百二十円台/㌦まで円高。輸出で潤っていた日本の実業は、海外では事実上の倍額というルール大変更で大打撃を受け、当時の中曽根内閣は金融緩和を推し進め、民間は実業ではなく投資(主に土地)に走ってバブル化した。


話を戻すと、日本政府だけの「債務残高」「GDP対債務比率」が問題ではなく、民間を合算した「純資産額」が重要である。今の日本国は財務的に何ら問題が無い。最上のグラフは日本国の資本金と捉える。強いて言うなれば、資本金である「国債残高」が大いに越した事は無いが、為替や金利(主要国家政府の輿論)を注視する必要がある。強化すべきはバブルの二の舞にならない様に、実業を強化=国内投資を促し、足腰を鍛える事に尽きる。


世界からの日本投資は、程ほどで良い。平成不況で債権(実質支配権)を他国へ売り渡し、日本企業は人材育成をできなくなってしまったからだ。


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