【経済・財政報道】 経済同友会(代表理事:櫻田謙悟)は、令和五年三月二十八日に『骨太方針 二〇二三』に対する意見を発表した。副題は「持続可能な財政構造の実現に向けて」。
同友会は、経団連・日商と並ぶ経済団体。大企業の経営者が個人で参加している。
今回、同友会は岸田政府へ「財政緊縮」と二十代~三十代の意見を借り、「増税」を仄(ホノ)めかした。「財政拡大」を露骨に非難している。但し、個別の具体策は優れているものもある。
<意義の内容>
同友会は、「日本の財政・社会保障を何とかしようという若い世代からの発信は殆ど見られない。」と、若者・若手を代弁する報道府の存在を無視した。報道府は若者・若手に対し、『世代会計』を筆頭に財政論を報じている。
中堅・シニア達が若者・若手の意見を代弁していると言わんばかりだ。報道の現場において、報道府を外そうとする中堅・シニアは非常に多い。そして勝手に若者・若手の事を決める。この点に関し、二十九日に報道府は同友会へEメール及びFBにて下記の意義を唱えた。
公益社団法人 経済同友会
広報 御中
貴社団は、令和五年三月二十八日に『骨太方針 二〇二三』に対する意見を発表しました。以下の点に対し、日本で唯一、若手を代弁する報道機関『報道府』として公開異議を唱えます。
「日本の財政・社会保障を何とかしようという若い世代からの発信は殆ど見られない。」
報道府は十年以上、政治経済社会の現場を取材し、報じてきました。その中で「国家財政」は非常に重要であり、『世代会計』を筆頭に財政論を報じてきました。
依って、貴社団の先の文言は訂正をして頂きたい。
以上
財政の信認
当該意見にて、「日本の財政に対する信認低下に伴うリスクプレミアムの拡大が、財政支出を更に増 大させる懸念がある。」と記した。「市場の信認」等の問題である。この点につき、記事「『市場の信認』とは?」にて、GDPが信認の対象である事を指し示した。
GDPが向上すれば、税収が上がる為、平成バブル崩壊直前の財政健全化を実現できる。
短期的には同友会の言う通りだが、その度に消費税を増税してきたからこそ、明治以来で初めて八十万人/年の出生数を切る羽目に陥っている。消費税は国家滅亡策である。故に、中長期的には大企業を筆頭に法人税を元に戻し、消費税を廃止し、GDPを上げ、税収を上げる。
依って、リスクプレミアムの拡大から財政拡大するのではなく、少子化を防ぐ為に財政拡大する。
同友会の趣旨ならば財政緊縮にはならない
次に「財政硬直化の悪影響を強く受けるのは、日本の将来を担う若年層や将来世代である。」について。こちらはその通りである。財政の硬直化=財政の緊縮であり、その結果、今現在の若者・若手が害を被っている。
各種『世代会計』記事の通り、ゆとり世代が最も財政緊縮の責任を負わされている事を明らかにしてきた(例;記事「搾取され放題のゆとり世代、その額は一人当たり六千万円から一億円か|日本の世代会計」)。
そして「若い世代の問題意識を喚起したい。」と記す。これもその通りである。財政を緊縮させて硬直化させ続ければ、子ども以降の世代も中堅・シニアの失敗の責任を負わされる。
依って同友会の趣旨ならば、主張すべきは財政拡大(『財政法』四条の改正等を含む)と減税である。
意見の内容
- 可処分所得が持続的に増加する社会づくり
- 少子化対策の実効性を高める現役世代の負担軽減
- 財政・社会保障に係る情報提供の在り方
<可処分所得が持続的に増加する社会づくり>
一では、賃金が上昇しても、現役世代が「可処分所得の増加」を実感できない主因を、「後期高齢者支援金」や「介護保険料負担」が増加を続けている事にある、とした。
「社会保障関係費/国家予算」の事を指しているが、これが主因ではない。主因は、米中の様に国債発行をしない事だ(『財政法』四条によるブレーキ)。同友会は間違っている。
「産業・企業の新陳代謝促進に不可欠な税と社会保障、労働市場の一体改革」では以下を主張。
- 消費税の増税論
- 「年末調整制度」や「退職金税制(二十年超の長期雇用を優遇)」の廃止
- 「配偶者控除」や「在職老齢年金」の一部支給停止
- 公的年金を「給与所得」へ変更、「給与所得控除」へ一本化
- 補助制度等を早期に廃止
- 「法人事業税」の外形標準対象下限(資本金≧一億円)の引下げ
- 「代位弁済比率/信用保証制度」の引下げ
「人への投資を促す控除制度の創設」では、以下を主張。
- 「教育訓練費」の各種制約を緩和
- 一人ひとりが、より生産性の高い業務に就き、より高い報酬を得られる様ににすべき
- 「職業訓練」に掛かる給付は法人から個人へ
- リカレント費用に掛かる「将来所得からの控除制度」導入
「就労意欲を促進する制度への見直し」では、以下を主張。
- 各種控除(配偶者控除等)等の廃止・縮小
- 上記を少子化対策の財源に
<少子化対策の実効性を高める現役世代の負担軽減>
二では、平成二十九年時点の中位推計に比べ、十年超も前倒しで少子化が進んでいる点を記し、「出生数の増加に向け、子育てに掛かる負担の軽減やライフステージに応じた働き方の選択肢の増加等に、官民が連携して取組まなければならない。」とした。
そして「その財源は、現役世代に負担が偏る所得税や社会保険料に求めるのではなく、広く薄く皆が公平に負担すべきである。」と、消費税の増税を仄めかした。安定財源は「教育国債」である。
「現役世代に偏った負担構造の見直し」では、以下を主張。
- 「医療給付」へのマクロコントロールの導入;年金「マクロ経済スライド」の様な“自動調整機能”
- 「後期高齢者の医療費」自己負担二割の対象範囲の拡大;現在、二割負担の対象範囲が、半分
- 受診時「定額負担」の導入;各保険制度における「低所得者への給付財源」等を確保すべき
- 基礎年金の「マクロ経済スライド」の名目下限の撤廃と老齢基礎年金「拠出期間」の延長
「子育てに係る経済的負担の軽減」では、以下を主張。
- 「雇用保険」の包摂性向上;二十時間未満/週の就労者等へも適用拡大
- 「家事支援に係る助成制度」等の創設;自治体から国家レベルで共通の支援制度を
「将来不安を軽減する持続可能な財政構造の実現」では、以下を主張。
- 財政健全化(PB黒字化)目標の実現に向けた道筋の明確化;「これまでを超える」歳出改革(財政緊縮)が必要。危機時に、復興財源を短期的には国債発行により、調達できる環境を整えておく必要
- 「補正予算」に係る規律の強化;『財政法』二十九条の規定に立ち返り、巨額化した補正予算の規律を強化すべき(財政拡大を阻止したい)
- 「予備費」の規模の正常化;「一兆円以下」と骨太方針へ明記すべき。既得権益化も懸念
- 「債務償還プラン」の具体化;コロナ対策に伴う負担は、現世代が負担すべき。他の主要先進国同様、債務償還に向けた財源の調達方法・返済期間を速やかに具体化すべき(増税を仄めかす)
- 「コロナ対策」の効果と妥当性の速やかな検証
<財政・社会保障に係る情報提供の在り方>
三では、生活に関わりの深い「税や社会保障に関する事実へ触れる機会」を増やす必要がある、と。この点は、その通りである。
昨年末に同友会は、若者・若手を集め、「財政フォーラム」を開催。講師は財政緊縮・増税論で著名な「慶大」土居丈朗(庚戌)教授。報道府への取材案内は無かった。
ハイムでも、事実を歪める土居教授の論理を散々論破してきた。そのフォーラムより、若者・若手の意見として同友会は、以下を引用。
これまで消費税率引き上げにネガティブなイメージを持っていたが、増税の選択肢の中では 、消費税が最もフェアであると理解できた。
国民に対し、もっとポジティブな発信をした方が良い
上記等の若者・若手の指摘を踏まえ、「政治・政府に求める取組み」として以下を提言。
- 「独立財政機関」の創設;将来世代の利益を代弁する。当然、『世代会計』の問題を指摘している若者・若手の報道府は入るべきだろう
- 高校「公民科」における教育充実;税と社会保障を一体的に学べるカリキュラムとすべき(=増税意識の洗脳教育)
- 「金融経済 教育推進機構」の活用;日本の財政や税・社会保障に係る国民の理解促進を同機構の業務として明確に位置付けるべき
更に、「新入社員研修等における税・社会保障に関する学びの機会提供」にて、同友会の会員所属企業は、新入社員研修時及び初めての賞与支払い時等に、「日本の財政・社会保障」や「各々の負担の現状」、「税・保険料の使途に係る動画の閲覧」等の学びの機会を率先して設ける事、と定めた。
これは増税意識の洗脳が懸念される。当該従業員は、動画閲覧等の強制があった場合には拒否できる。それらは自由であり、企業に強制する権利は無い。酷い場合には、「刑法」二百二十三条『強要罪』で告発が可能。
同友会「財政・税制委員」
委員長
- 竹増貞信(ローソン取締役社長)
副委員長
- 岩瀬大輔(Spiral Capital マネージングパートナ)
- 大薮貴子(武田薬品工業 チーフ グローバル コーポレート アフェアーズ&サステナビリティ オフィサー)
- 木内文昭(マクアケ共同創業者/取締役)
- 早川由紀(大和証券グループ本社執行役員)
- 原口貴彰(アクセンチュア常務執行役員)
- 湧永寛仁(湧永製薬取締役社長)
委員
- 赤池敦史(シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン代表取締役日本共同代表マネージング パートナ)
- 石黒不二代(ペガサス・テック・ホールディングス取締役)
- 岩崎俊博(T.IWASAKI取締役社長)
- 内田高史(東京ガス取締役代表執行役社長)
- 内永ゆか子(J-Win会長理事)
- 恩田学(GTM総研取締役副社長)
- 梶川融(太陽有限責任監査法人代表社員会長)
- 河田正也(日清紡ホールディングス取締役会長)
- 菊地麻緒子(日立建機取締役)
- 北地達明
- 行天豊雄(三菱UFJ銀行名誉顧問)
- 久慈竜也(久慈設計取締役社長)
- 楠原茂
- 熊谷亮丸(大和総研副理事長兼専務取締役)
- 栗原美津枝(価値総合研究所取締役会長)
- 栗山浩樹(NTTドコモ取締役副社長)
- 桑原茂裕(アフラック生命保険取締役副会長)
- 神津多可思(日本証券アナリスト協会専務理事)
- 小林洋子(宇宙航空研究開発機構(JAXA)監事)
- 酒井重人(グッゲンハイムパートナーズ取締役副会長)
- 坂本和彦(錢高組監査役)
- 迫田英典(SOMPOインスティチュート・プラスエグゼクティブ・アドバイザ)
- 佐藤誠治(デサント社外取締役)
- 正田修(日清製粉グループ本社名誉会長相談役)
- 菅原郁郎(トヨタ自動車取締役)
- 関根愛子(日本公認会計士協会相談役)
- 錢高丈善(錢高組取締役専務役員)
- 瀧原賢二(日清製粉グループ本社取締役社長)
- 田中洋樹(日本カストディ銀行取締役会長)
- 谷川史郎(NTTアーバンソリューションズ社外取締役)
- 田沼千秋(グリーンハウス取締役社長)
- 土屋達朗(フジタ上級顧問)
- 手島恒明(ニッセイ基礎研究所取締役社長)
- 寺澤辰麿(横浜銀行名誉顧問)
- 富樫直記(Ridgelinezシニアアドバイザ)
- 中野武夫(みずほ信託銀行常任顧問)
- 中村善二(UBS証券取締役社長)
- 並木昭憲(MS&Consulting取締役社長)
- 野澤康隆(浜銀総合研究所取締役会長)
- 芳賀日登美(ストラテジックコミュニケーションRI取締役社長)
- 羽深成樹(三菱ケミカルグループ執行役シニアバイスプレジデント)
- 樋口智一(ヤマダイ食品取締役社長)
- 堀井昭成(キヤノングローバル戦略研究所理事特別顧問)
- 本田勝彦(日本たばこ産業社友)
- 増渕稔(日本証券金融名誉顧問)
- 三毛兼承(三菱UFJフィナンシャル・グループ取締役執行役会長)
- 三宅茂久(税理士法人山田&パートナーズ統括代表社員)
- 安田育生(ピナクル取締役会長兼社長兼CEO)
- 山岡浩巳(フューチャー取締役)
- 山田和広(カーライル・ジャパン・エルエルシーマネージングディレクタ日本代表)
- 山中一郎(朝日税理士法人代表社員)
- 山本謙三(オフィス金融経済イニシアティブ代表)
- 横田成人(ヨコタエンタープライズ代表取締役)
- 吉田安宏(住友商事執行役員)
記事:金剛正臣
写真:トップコミットメント/SOMPOホールディングス
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