若手・経済学者「滝澤美帆」&「仲田泰祐」が二回目のプレゼン|第三回『経済財政諮問会議』

【経済・財政報道】 岸田総理(丁酉)は、令和五年三月三十日に総理大臣官邸にて第三回『経済財政諮問会議』を開催した。本会議は、実質的に日本の最高会議。


今回は、有識者による特別セッションを議題「成長と分配の好循環」に行った。特別セッションは二回目。


開催後、岸田総理は「本日の議論にもありましたが、先進各国共に、安定的なエネルギ供給の確保、サプライチェーンの強化や気候変動対応等の課題に直面しており、こうした社会課題に、官民連携して投資を喚起する取組みが大きな流れとなっています。


この考え方は、新しい資本主義と軌を一にするものであり、来るG7サミットにおいても、新しい資本主義の重要性やこうした取組みへの国際的な連携の必要性について議論を進めて参ります。」と述べた。




<実質賃金の変化>

 若手の「学習院大」滝澤美帆(己未)経済学部教授は、「成長と分配の好循環の実現に向けた施策の検討」を提出。「労働生産性の変化」の要因分解を指し示した。


  • 実質賃金の変化=労働生産性の変化(A)+労働分配率の変化(B)+その他の要因(交易条件の変化等、C)


  • A=労働の質の変化+資本装備率の変化+TFP(全要素生産性)の上昇
  • B=人件費=付加価値-(営業利益+その他)
  • C=交易条件の悪化(生産の海外移転、原材料の海外調達等)、消費者物価指数の上方バイアス等



検討内容

 成長と分配の好循環の実現に向けた施策の検討として、以下の三点を岸田総理へ伝えた。


  1. 長期に亘る賃金上昇を実現する為には「労働生産性」の向上が重要
  2. インフラの整備」「人的資本投資」への政府の積極的関与が必要
  3. 日本の資源配分」の効率性は悪化


一では、「交易条件の悪化の要因を探り、改善する必要」と「有形資産及び無形資産(人的資本)への投資の持続性が重要」と。


三では、生産性の高い(低い)企業のシェアは、拡大(縮小)していない。但し、足元はやや改善しており、この動きを妨げない政策として、成長性の高い企業への重点的な支援を上げた。




<「新しい資本主義」の最大化>

 もう一人の若手の「東大」仲田泰祐(庚申)大学院経済学研究科・公共政策大学院准教授は、『「新しい資本主義」に関するコメント』を提出。


「新しい資本主義」の社会的インパクトを最大化する為に以下三点を提示した。


  1. 具体的な施策一つひとつに、どの様な効果が期待されるかを提示
  2. 具体的な施策一つひとつの事後検証;期待されていた効果が実際にあったか。可能な限り因果的効果を検証する事が理想
  3. 検証結果によって、政策を臨機応変に調整;効果の小さい政策に関しては縮小・撤廃を検討。効果の大きい政策は継続・拡大を検討



政策の同時適用(Policy Mix)

 仲田准教は、経済成長率を以下とした。


  • 経済成長率=「潜在成長率」+「短期・中期ショックによる景気変動


財政政策では、潜在成長率の押し上げ、「Automatic Stabilizer(景気の自動調節弁)」を通した景気変動対応。特に、「金利下方制約下」において。


金融政策では、景気変動対応。金融政策も、潜在成長率とは全く無関係ではない事には留意、とした。



「新しい資本主義」と「現代サプライサイド経済学」

 また、岸田内閣が掲げる「新しい資本主義(≒合本主義、≒公益資本主義)」は、潜在成長率を上げる試み、社会として望ましい価値観を促進する試み、とした。両者は、必ずしも同一でないが、必ずしも相互排他的でもない、とした。


更に、仲田准教は、「新しい資本主義」と「Modern Supply Side Economics(現代サプライサイド経済学)」との共通点を岸田総理へ伝えた。


  1. 減税と規制緩和による成長を目指した「サプライサイド経済学」と違い、「現代SS経済学」は、財政支出を用いて労働 供給・労働生産性の向上を通した成長・所得格差縮小・環境保護を目指す
  2. 「新しい資本主義」で強調されている幾つかの項目(人的投資・スタートアップ加速・GX投資)は、「現代SS経済学」で強調されている項目と整合的
  3. 「新しい資本主義」は、現代SS経済学よりも多くの議題に触れており、より総合的
  4. 現代SS経済学に対する批判は、「新しい資本主 義」にも当て嵌まり得る


四につき、「実際に打たれる政策が、意図した効果を生み出さない可能性」「政府の投資が民間の投資よりもリターンが低い可能性(Gramm and Solon (2022))」を指摘した。


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