金融庁の報告書『高齢社会における資産形成・管理』で不足額は二千万円と

【人生報道】 金融庁/内閣府は、令和元年六月三日に市場WG(座長:神田秀樹・「学習院大」大学院 法務研究科 教授)による報告書『高齢社会における資産形成・管理』を公表した。委員は座長を含む民間から二十一名。オブザーバには消費者庁、財務省、厚労省、国交省、日本銀行、日本取引所G、日本証券業協会、投資信託協会、日本投資顧問業協会、信託協会、全国銀行協会、国際銀行協会と生命保険協会の名が並ぶ。

委員には「読売新聞」東京本社の論説副委員長も参画。


WGは昨秋より議論を十二回行った。はじめにの末尾には以下を期待。

今後とも、金融サービス提供者や高齢化に対応する企業、行政機関等の幅広い主体が、今回の一連の作業を出発点として国民に本報告書の問題意識を訴え続け、国民間での議論を喚起することにより、中長期的に本テーマにかかる国民の認識がさらに深まっていくことを期待する



人生百年時代を「将来人口推計」より統計的に確認。健康寿命と平均寿命の差を縮める点を重要とし、高齢者が若年者に比べて突出して多い点を見込み、認知症は六年後に五人に一人(六十五歳以上)と推計する。


収入・支出に関して。各世代の収入は全体的に低下傾向、支出は三十代半ばから五十代にかけて低下が顕著。高齢夫婦の無職世帯の平均では、毎月の赤字額は約五万円。赤字額は自身が保有する金融資産より補填。思考に関して。「六十歳から六十五歳」の数的思考力や読解力のテストのスコアは、OECD諸国の「四十五歳から四十九歳」の平均値と同じ水準。


退職金給付額は近年減少。給付額は、ピーク時から三割から四割程度も減少している。今後も退職金制度の採用する企業数や退職給付額の減少傾向は続く可能性を示唆した。六十五歳時点の金融資産の平均保有状況では夫婦世帯が二千二百五十二万円、単身男性は一千五百五十二万円、単身女性は一千五百六万円(二十六年「全国消費実態調査」)。赤字額の約五万円が毎月発生する場合には、二十年で約 一千三百万円、三十年で約二千万円の取崩しが必要と試算。

この取り崩しに関する支出には、特別な支出(介護費用や住宅リフォーム費用等)を含んでいない。


よって早期の生涯の老後のライフ・マネー プランを検討し、老後の資産取崩し等の具体的なシミュレーションを重要と断言。


ポイントは、資産寿命の延命だ。「老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか、考えてみることである。」と訴える。基準は夫六十五歳・妻六十歳で残二十年から三十年とし、赤字額は一千三百万円から二千万円。


現役期に長期・積立・分散投資による資産形成の検討、退職前後に計画的な長期の資産形成・管理の重要性の認識を説く。詰まり、公的年金の受給に加えた生活水準を上げる為の行動を促す。「『自助』の充実を行っていく必要があるといえる。」と公的年金では試算上、足らない。 


具体的な対策には、以下の三点を挙げた。

  1. 個々人にとっての資産の形成・管理での心構え;現役期には資産形成、退職前後には金融資産の目減りの抑制・計画的な資産の取崩し、高齢期には医療費等の見直し・認知症等への備え
  2. 金融サービスのあり方(金融機関側);顧客本位の業務運営の徹底等
  3. 環境整備(行政機関側);資産形成・資産承継制度の充実、金融リテラシの向上、アドバイザの充実、高齢顧客の保護


そして結びを以下とした。

この報告書が契機の一つとなり、幅広い主体に課 題認識等が共有され、各々が「自分ごと」として本テーマを精力的に議論する ことを期待している

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