産経・田村秀男 特別記者が語る「財政新次元」|第五回『ポストコロナの経済政策を考える議連』

【政経・財政・金融報道】 令和三年四月九日に国会にて自民党『ポストコロナの経済政策を考える議員連盟(会長:安倍晋三)』は、第五回目となる勉強会を実施した。


講師は産経新聞・田村秀男(丙戌)特別記者。​「新型コロナ後の日本及び世界の経済」と題し、従来の経済学とは異なる世界へ変わっている点を以下の三部構成で指摘した。経済構造が変化している点は財務省民間シンクタンクも認めている。安倍前・内閣総理大臣(甲午)や山本幸三元・地方創生大臣(戊子)等も学んだ。


  1. 新型コロナ戦争;後れを取る日本、巻き返す鍵は国家としての危機意識にある、政府と政治の役割が重大
  2. 財政政策新次元;バブルを引き起こすのか、日本再興の道にできるのか
  3. コロナ肥りする中国;習政権のアキレス腱は金融、トランプ前政権は見抜いたがバイデン政権はそこを突けるか



<日本よりも米国がバブルか>

 一では、国別の新規感染者数を例に、日本が圧倒的に少ない点を指摘。収束時期の明確化を主張した。民放各社や各知事が煽っているよりも日本は世界的に危機的状態ではなく、死亡者数は累計で未だに一万人を切っている(報道現在)。自殺者数の方が既に多い。


二では、世界各国の「対コロナ財政追加支出」の棒グラフと「対GDP比」の折れ線グラフより、世界の財政政策が新次元に移行している点を指摘。一月時点で日米英は自国GDPの実に十五㌫以上を支出しており、驚異的な数字に跳ね上がっている。しかも米バイデン政権は追加政策で二十五㌫以上になる。主要各国とも本年度でV字回復をする見込みである点も伝えた(IMFデータ)。


続いて、財政・金融拡張は株高を招く点を強調。政府が借金をし、国民の現預金が増加する程に日米両国の株価は上昇。現時点でバブルか否かにつき、「株価(S)」と「国債金利(i)」の関係で説明。

  • S↑・i↓、S↓・i↑=正常
  • S↑・i↑=バブル
  • S↓・i↓=バブル崩壊


これによると日本はバブルでない、と言える。一方の米国はSもiも上がっているので、「この状況が長期化するのであれば、ちょっとそれは心配だな。」と田村記者は述べた。



政治に求められる金融・実体経済のリンケージ

 ただ、日本には米国とは異なって別の問題がある。「株価」と「実質個人消費」の相関係数を調べた所、米国はコロナ前後で相関係数が〇.八を超えており、金融経済と実体経済が連動している。相関係数は一に近づく程に連動性が高い。日本の方はコロナ前で〇.七まであったが、コロナ後に〇.四を切ってしまった。金融経済と実体経済がかけ離れている。


田村記者は「この辺りのリンケージをですね、矢張り、政策や政治サイドの方でしっかりと考えて貰った方が現実的な解決方法ではないか。」と政治へ期待した。


名目GDPでは日本が二十五年間も全く成長せず、一人負けしている点を指摘。「日本は安いって事なんですね。これ程に安い国は無い。GDPが拡大してないのは、国際的に見れば国力の相対的低下と言わざるを得ない。」と危機意識を募らせた。


また日本の余剰資金(対外金融総債権)があるにも関わらず、内需が弱い。その隙を突く様に、日本の余剰資金を以て成長しているのが中国とも指摘した。内需で潤う筈の資金が、中国を肥えさせてしまっている。



中国・香港と米バイデン政権

 そこで三では、「米中対立の鍵は金融にあり」とする。前トランプ政権では中国への金融引締め等により、中国のGDP成長率を鈍化させたものの、現バイデン政権では金融引締めへ未だ動いてない点を伝えた。但し、中国の生命線である「香港ドル」の「米ドル」交換停止という切り札がある(米『香港人権民主法』)。


中国はこれに対抗する様に「香港市場」を乗っ取り、新設「資格審査委員会」を以て、香港の政治を完全な管理下に入れる。「立法会議員 選挙」は十二月、「行政長官 選挙」は四年三月。来年に香港の政治は変わる。


「デジタル人民元」も監視政策で注意事項だが、田村記者は中国の米ドル依存より、驚異性が薄い点を伝えた。講義詳細は下記の動画より。尚、本議連は提言をまとめ、来月以降で菅内閣へ提出する予定。


記事:金剛正臣、撮影:岡本早百合

スライド:田村秀男/産経新聞

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